つみき通信

このブログは、つみきの会の各支部リーダーを始め、理事、事務局スタッフなど、つみきの会の活動を支えるスタッフたちからのお便りをお届けするものです。ぜひ、時々お立ち寄りください。

サンフランシスコ見学報告(1)

3月上旬にサンフランシスコ郊外のモデストという町にある二つの著名なABAエージェンシーを見学してきました。

一つはケンダルセンター(別名Therapeutic Pathways)というエージェンシーで、ジェーン・ハワードさんという方が代表をされています。
(写真はケンダルセンターのトレーシー支部のスタッフの皆さんと撮ったもので、右から三番目の方がハワードさんです)。ハワードさんは大変親切な方で、今回の見学も昨年9月の国際ABA学会の際に、私が初対面のハワードさんに見学受け入れをお願いしたところ、快く引き受けて下さって、実現したものです。
ケンダルセンター3

ケンダルセンターはセンターベース、つまり通所型で週25-35時間の本格的な早期集中型ABA(EIBI)を実施しているエージェンシーです。

ハワードさんやスタッフの皆さんのお話しによると、ケンダルセンターでは、子どもが3才になるまでは家庭にセラピストが訪問して週6-15時間のセラピーを行い、3才になると最寄りのセンター(モデスト本部のほか、トレーシー、ダブリンなどにもセンターがあります)に子どもが通って、週25-35時間の集中的なABAセラピーを受けます。
ただしそのうち約半数は午前中3時間半、近くの公立のプリスクール(日本の幼稚園年少、年中にあたる)にケンダルセンターのセラピストのシャドー付きで通い(この時間もセラピー時間としてカウントします)、午後、ケンダルセンターで個別のABAを3時間半受けるそうです(週35時間の場合)。残り半数は午前中から終日(9-16時)センターでABAを受けます。もっともすべての時間が1対1ではなく、模擬プリスクールの時間もあります。

セラピーの費用は州の公費か民間の医療保険会社によって賄われます。ハワードさんによると、州がABAセラピーの費用を医療保険会社に負担させる法律を制定する動きは2000年初頭から始まり、いまでは全米50州のうち42の州で同様の法律が制定されているそうです(カリフォルニア州では2012年に法律が制定されました)。それまではニューヨーク州やカリフォルニア州のような一部のリッチな州だけが公費でABAを実施していたのですが、これによってABAが全米に広がることになりました。

つまり現在、米国の大半の州では、子どもが自閉症と診断されれば、医療保険によって、わずかな自己負担でABAセラピーが受けられるのです。週35時間のABAセラピーのコストは年間8万ドル~11万ドルと非常に高額なのですが、この制度のおかげで、カリフォルニア州の場合、親の自己負担は月20ドル、年間1500ドルが上限とのことです。

もっともすべての州、すべての地域で週35時間のABAセラピーが保険でカバーされているわけではなく、ABAセラピーのメッカ(?)、ロサンジェルスですら、週10-15時間のセラピーが主流で、週30-40時間のABAを実施しているのは、ごく一部のエージェンシーに限られます(州当局は週10-15時間を限度とする傾向にあり、一部保険会社のみが、週30-40時間をカバーすることに同意するとのことです)。

ではなぜこのモデストという町でケンダルセンターが週35時間を維持できているかというと、過去にこの地域の親がABAへの公費援助を求めて訴訟を起こして勝訴し、それ以来、モデスト周辺の5つのカウンティでは、一定の条件を満たした自閉症児には週35-40時間のABAの公費負担が義務付けられた、とのことです。

私たちは3日間にわたり、実際にセンターでのセラピーや、家庭でのセラピーを見学させていただいたのですが、セラピストはみな非常によく訓練されていて、子どもの注意を上手に引き付けていました。ケンダルセンターでは主に大学生のアルバイトをセラピストとして雇っていて、独り立ちさせる前に40時間の事前訓練(実地訓練を含む)を施すそうです。そのせいか、みな学生バイトとは思えないほどの熟練ぶりでした。

セラピーはいすにすわっての1対1のセラピー(DTT)が5~10分のあと2-3分の遊び、というサイクルを繰り返します。DTT(不連続試行法)はケンダルセンターの場合、大部屋で3~5組の子ども+セラピストが同時に行っていました。隣の子どもの泣き声も丸聞こえでしたが、その割には子どもたちはセラピストの指示に集中できていました。

遊び時間は屋内のプレイルームか屋外の庭で遊ぶかを子どもに選ばせます。遊びの間も「構造化された遊び(structured play)」と言って、絶えずセラピストが子どもに働きかけ、何らかの反応を引き出しているのが印象的でした(パズルをさせながら、絵を指さして「これ何?」と聞き、「牛」と答えさせるなど)。

ケンダルセンターは、早期集中介入で結果を論文に公表しているところとしては数少ない、非ロバース系統のエージェンシーです。ロバース系統のエージェンシーに比べて、問題行動に対して消去や罰を使わず、もっぱらDRO(問題行動に代わる適切な行動を促して強化すること)で対処していること、随所に子どもの選択権を認めて、モチベーションを高める工夫を取り入れているところなどが特徴かな、と思いました。
(つづく)

藤坂



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