つみき通信

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親がセラピストになるということ

さて、さっそくですが、言いたいことを一つ書いておきましょう。というのは、きょうから一週間、家内と娘が実家の台湾に里帰りしていて、珍しく夜、時間の余裕があるのです。いつもは家内と娘が11時過ぎに寝てからが、私がパソコンに集中できる時間なので、なかなかまとまった文章が書けないのです。

今回、真っ先に言いたいこと、というのは、「親がわが子のセラピストになれる」ということです。また「なるべきだ」ということでもあります。

その根拠は、昨年?亡くなった故ロバース博士が1973年に発表した古典的な研究論文です。つみきの会の方は、「つみきBOOK」の最初に書いてあるので、ご存知ですね。

ロバース博士は、1964年に、「言葉のない自閉症児にABAで言葉を教える」という野心的な研究を始めたのですが、最初の頃は、親にはABAは難しすぎて無理、と考えていたので、親から引き離して大学病院に入院させ、学生セラピストがABAセラピーを行いました。

そうすると、セラピーによって子どもに言葉を教えることはできたのですが(このこと自体、ノーベル賞ものだと思います!)、大学でのセラピーを終えて元の環境に戻すと、子どもは2,3年後の再調査で、言葉をほとんど忘れてしまっていました。子どもの周囲の人間が、その子が学んだことを復習させなかったからです。

(ちなみに、この時代、自閉症は「冷蔵庫ママ」と言って冷たい心を持った母親から生まれる。その愛情不足が原因だ、と思われていたので、ロバースの研究の対象になった子どもたちは、すでに親から切り離され、州立病院に入院させられていました。大学での治療が終わった後も、家庭ではなく、州立病院に戻されたのです。)

ロバース博士はこの悲劇を繰り返さないためにはどうしたらよいか、を考えました。その結果、これまでの考えを改めて、親の力を信じ、親にABAセラピーのやり方を教えることにしました。子どもは病院に入院させるのではなく、家庭に戻して、家庭で親がABAセラピーをします。学生スタッフが時々家庭を訪問して、親御さんにセラピーの仕方などを指導します。

そうすると、親のセラピーを受けた子どもは、大学で専門の学生にセラピーを受けた子どもたちと同じくらい伸びることがわかりました。さらに大学で学生にセラピーを受けた子どもは、大学での治療が終わるとすぐに学んだことを忘れ始めたのに対して、親にセラピーを受けた子どもは、数年後の追跡調査でも学んだことを忘れていないばかりか、さらに進歩を続けていることがわかったのです。

ロバース博士はこの「親をセラピストとして家庭でABAセラピーを行う」という方式(親主導型セラピー)から、のちに「専門訓練を受けた学生セラピストを家庭に派遣して、親に代わってセラピーをする」という方式(セラピスト主導型セラピー)に転じました。これはその方が親の個人的な能力格差に左右されずに、安定してセラピー効果を期待することができるからではないか、思います。

しかしそれは「親主導型」のセラピーが誤っていたわけではありません。ロバース博士はより効果が高い方法に転じただけです。親主導型セラピーは、それまでの大学でのセラピーに比べれば、改善効果の点で遜色なく、効果の持続の点でははるかに優れていたのです。

つみきの会のABAは、このロバース博士による「親主導型セラピー」を受け継いだものです。ロバース博士と言えば後年の、「セラピストが交代で家庭に派遣され、平均週30~40時間のセラピーをする」というスタイルを連想する人が多いと思うのですが、このスタイル(早期集中行動介入、EIBI)は実現に膨大な経済的コスト(年間300~一千万円)がかかります。セラピストも不足している日本では、なかなか実現が難しいでしょう。

それより「親が教える」という方式なら、今現在からでも実施可能です。お金もかかりません。そして親にとって、いつ出てくるかわからない言葉を一喜一憂しながら何カ月も何年も待ち続けるよりは、たとえしんどくても、子どもの言葉を引き出すために本当に効果があることを自分の手で教えることができれば、その方がよっぽど幸せなのです。

綾ちゃんパパ

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NPO法人つみきの会は自閉症、広汎性発達障害という障害をもった子どもたちに、ABA早期家庭集中療育(ABAホームセラピー)を施す親とそれを支援する療育関係者の集まりです。
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